【横浜カルバリーチャペル】 天の窓
     
2022年10月2日

「あなたという人」

9/27、安倍元首相の国葬が武道館で行われ、岸田首相が代表して弔辞を述べられた。安倍元首相が国内外で築き残した数々の業績を語り、「今日につらなる礎」「日本と世界の行き先を示す羅針盤」と称えた。政治家・安倍晋三としての存在は誰もが認めるところであるが、国葬とはいえ、突然の訃報に悲しみ悼むご家族には愛する者との最期のお別れである。ひとり残された昭恵夫人にとってはかけがえのない夫を失ったのであり、この6月、安倍元首相のTwitterに家族で祝う誕生日の写真があげられた母・安倍洋子さんにとっては、94歳にして子を失うという、想像絶する痛み悲しみである。国葬問題で世論が二分したり、反対運動を目にするのは、ご家族にとってどれほど辛いことであろうか。もっともっと優しいお別れを、ご家族に進ずる事はできなかったのであろうか。

そんな中、友人代表で弔辞を述べられた菅元首相の言葉に感銘を受けた。愛する友を突然失った痛み悲しみをそのまま伝えた言葉は、首相としてのどんな輝かしい業績より家族の慰めであったに違いない。

「信じられない一報を耳にし、とにかく一命をとりとめてほしい。あなたにお目にかかりたい。同じ空間で、同じ空気を共にしたい。その一心で現地に向かい、そしてあなたならではのあたたかな微笑みに最後の一瞬、接する事ができました。あの運命の日から八十日が経ってしまいました。あれからも朝は来て日は暮れていきます。 やかましかったセミはいつのまにか鳴りをひそめ、高い空には秋の雲がたなびくようになりました。季節は歩みを進めます。あなたという人がいないのに時は過ぎる。口惜しくてなりません。哀しみと怒りを交互に感じながら、今日のこの日を迎えました」(一部割愛)

安倍元首相を「総理」と7回、「あなた」と14回呼ばれた言葉に、友を失った菅元首相の痛み悲しみがある。それまで堪えていた昭恵夫人も泣かれた。

今日は87歳の方の洗礼式が行われる。私達の信仰も、こんな私を「友」と呼び、その友の為に命を捨てられた方を「あなた」と直接お呼びできる関係なのである。命の「礎」であり「羅針盤」である永遠唯一の御方。この「あなた」を再び失い涙することはない。受洗おめでとうございます!