【横浜カルバリーチャペル】 天の窓
     
2022年7月10日

「放たれた三本の矢」

本日が投票日である参議院選挙の街頭演説中に、安倍晋三元首相が銃撃され亡くなられた。「崩壊の軌道」と題して水曜日には完成していたコラム「天の窓」を急遽差し替えた。速報で伝えられたニュースは、国内だけでなく広く海外にも伝えられ、行き場を失った深い悲痛と怒りが世界を覆った。ロシアのウクライナ侵略殺戮、台湾や尖閣諸島をめぐる中国の牽制、北方領土をめぐるロシアの動き、北朝鮮の核脅威、エネルギー及び食糧問題、インフレに将来の不安、加速度化する環境破壊に世界的異常気象現象。アメリカ・テキサス州の小学校銃乱射で21名の生徒や先生の尊い命が奪われた事件に続き、7/4の米独立記念日パレードでも銃乱射によって37名の死傷者が出た。この人類及び地球の「崩壊の軌道」は一体どこまで続くというのであろうか。

そして、この差し替え原稿を書いている時に鳴った電話。それは教会をあげて祈って来た福島ビンジャミン兄召天の訃報であった。「主よ、なぜですか。なぜ悲しみに悲しみが、こんなに重なるのですか」と、天を仰いだ魂から痛みをともなう吐息がこぼれ落ちた。

安倍元首相は、金融緩和、財政出動、民間投資というアベノミクス「三本の矢」を放った事で世界に知られる。サムエル記上20章には、サウル王に命狙われ、野に逃げ隠れたダビデの命を救うために、王子ヨナタンが野に放った三本の矢がある。「私と死との間には、ただ一歩の隔たりしかありません」と告げた親友ダビデの言葉に、ヨナタンはその死と命の僅かな隙間に、三本の救いの矢を放つ。その三本の矢を見たダビデは、泣きながら三度地に伏して礼をして去って行った。人が放つ矢は悲しいかな撃ち落され届かない事がある。しかし、死に直面したダビデに親友ヨナタンが放った三本の矢のように、あなたの為にあなたの友なるイエスが十字架に放たれたご自身の命の矢は、決して地に落ちる事も、撃ち落とされる事もないのである。ビンジャミン兄と天での再会を思い仰ぐ時、主にあってこの吐息は、喜びと感謝の賛美へと変えられるのである!