【横浜カルバリーチャペル】 天の窓
     
2019年12月29日

武井 博 名誉牧師 著

 私、最近、面白い本を読みました。新宿の歌舞伎町の裏の、大久保にある教会の関野和寛という牧師さんが書かれた本です。歌舞伎町というのは、まあ、かなり、危なっかしい区域です。そのすぐ裏の教会、そこで、関野牧師は働いておられるのですから、それは、私たちの教会などでは考えられないことが日々起こるのです。例えば、こんな訪問者です。―――「ドガン!教会のドアが開いた。クリスマスの時期、教会のロビーにキリスト生誕の場面を伝える大きな人形のセットを設置している時だった。飼い葉桶に寝かされている赤子のキリストと母マリヤ、そして羊飼いや三人の博士などを順に置いていた俺。見ると、ホームレス風のおっちゃんが、ワンカップ酒を飲みながら立っている。『お~、クリスマスか~。牧師さんよ~。キリストって本当にいたのかよ』と絡んでくる。『キリストはいたよ~。だから、クリスマスやってるんだよ』と、適当にかわしながらセットを完成させるため最後の人形、キリストの父ヨセフを取りに倉庫に行った。
 ヨセフ人形を抱えて戻ってくると、何と父ヨセフを置くスペースに、その酔っぱらいのおっちゃんが座っている!そして、キリストに話しかけている。『おい!お前さん!こんな冬に馬小屋にいたら風邪ひいちまうよ』。どうやら泥酔して、人形を本当の人間だと思っているようだ。そして、今度は母マリアに話しかける。『おい、お母さん、旦那はどこ行ったんだよ?こんな大変な時に。そうか、旦那は出て行っちまったか。ごめんな。俺も妻と子どもとずっと会ってないんだ。父ちゃんが帰ってきたら、これあげてくれ』と、その場に何かを置いて立ち去ろうとした。俺はヨセフ人形を持って飛び出し、『大丈夫、お父さんはここにいるよ』と、声をかけた。すると、『俺も10 年ぶりに家に帰ろうかなあ。家族に会えるようにお祓いをしてくれ、牧師さん』と、懇願するおっちゃん。お祓いは俺の仕事ではないが、『このクリスマスに、お父さんが、ご家族に会えますように』と、俺は渾身でゴッドブレス、神の祝福を祈った。
 クリスマス・セットに目をやると、博士たちがキリストに贈った黄金、乳香、没薬に並び、おっちゃんからの贈り物のワンカップが置かれていた。言葉はいらない、キリストよ、このクリスマスに全ての人にゴッドブレスを!」―――こんな文章が続くのです。兎に角、さまざまな人たちが、次々に、ドガン、ガシャン、と教会のドアを開けて、中に入って来ます。元暴力団員、フィリピン・パブで働く出稼ぎのホステス、難民申請中のアフリカ系の大男、捨て猫を抱えて入ってきた男の子、結婚式を挙げる費用がなくて、何とか二人きりの結婚式をここで今挙げさせてくれ、と泣き込む中年カップル、クリスマスに、教会にやって来た和尚、などなど。――――
 普通の教会では、あり得ない訪問客が絶えない、異色の教会ドキュメントでした。いよいよ、最年末、今日も、様々な珍客の対応に忙しい牧師の一日だと思います。異色の教会に祝福あれ!! ハレルヤ!