【横浜カルバリーチャペル】 天の窓
     
2019年7月14日

「 愛されたカブトムシ 」

数日前の7月10日、ドイツの自動車会社フォルクスワーゲンは、1938年以来80年以上世界で愛された名車「ビートル」の生産を終了した。ご存知、ビートルとはカブトムシの意味で、あの丸みを帯びた可愛い独特のデザインは、まさにカブトムシを思わせる。「バタバタバタ」というビートルの乾いた排気音が懐かしいのは、私だけではないであろう。

一方、1956年、富士重工製作の国産「スバル360」は、ビートルを二回りほど小さくしたデザインで、弟分なのか?「テントウムシ」と呼ばれた。ビートルが世界の自動車産業に与えたインパクトは大きく、生産累計台数は3400万台超えで、一車種の生産台数としては、今も世界記録である。メキシコ工場最後の一台は、道を走る為ではなく博物館に収蔵された。

一方80年前の一台目は、第二次世界大戦直前にナチスドイツ・ヒトラーのもと、あのポルシェの創業者フェルディナント・ポルシェ博士の設計で誕生した。数年前、息子の住むドイツを訪ねた時にはビートルを見かけた記憶がない。調べると、欧州での生産は1978年に終了していた。世界で愛される車も、ドイツではヒトラーの余韻が残ってしまうのであろうか。

以前、カナダの教会の信徒さんが、黄色の新しいビートルに乗っていた。初めて乗せてもらった時のワクワク感を今でも覚えている。ハンドルを握るだけで楽しくなってしまう不思議な車であった。驚いたことに、ダッシュボードには花瓶がついていて、一輪の花を飾れるようになっていた。

一体、なぜこの車は、こんなに長く、こんなに広く世界で愛されたのであろうか。可愛いデザインだけでなく、誰もが過ごした良き昔を心地よく思い出させてくれるのである。80年経って、車の全てが新しく、また進化しているのであるが、それがビートルであることが誰にでもすぐわかる。ハンドルを握った時のあの不思議な感動も変わらずにあるのである。それは「継承と進化」という二つの相対する流れの調和・融合であろうか。まことに心地よいものである。教会も80年ではない、二千年に渡って長く広く世界の人々に愛され、また多くの良きものを与えてきた。今、新しい時代に向かって、今を明日へと生きる私達/現代の教会も「継承と進化」という調和/融合の中で、新たに明日をとらえたいのである。いつの日か、またひとつ、新しいE・ビートルが生まれることを楽しみにしつつ!