【横浜カルバリーチャペル】 天の窓
     
2018年10月21日

「 命のバイオリン 」

ファッションサイトZOZOTOWNの前澤社長が、最近、1717年製のストラディヴァリウス(バイオリン)を自らのコレクションに加えたと発表しニュースとなった。世界に600本しか現存しないストラディヴァリウスはどれも大変高価で、数億円のものと推定されている。そもそも年収35億円の前澤社長にとっては安い買い物であるのかもしれない。更に、民間人では初となる月宇宙旅行の為に、推定750億円で「スペースX(宇宙船)」の全9席を既に買い占めたと言うからまさに雲の上の話である。
ストラディヴァリウスのように高価ではない普通のバイオリンが、英国のオークションで1億4200万円の破格の高値で落札したというニュースが2013年10月21日の朝日新聞に、その写真と共に掲載されていた。ドイツ製のそのバイオリンは、バイオリニストであった男性の婚約者が彼に贈ったものであった。1912年4月14日、このバイオリンは死亡した彼と共に海上で発見されたものであり、その夜、楽団員の彼はタイタニック号で演奏していた。彼の楽団は船が沈没する際、救命ボートで脱出する乗客らがパニックを起こさないようにと甲板で最後まで演奏を続け、全員が死亡したという。自らの結婚を前にしながら、婚約者が贈ってくれたバイオリンを、見ず知らずの他人のために命がけで最後まで弾き続けたのである。そのバイオリンと共に海に沈んだひとりの人の犠牲が、時代を経て、遠く日本の地にも知らされた事に深い感銘を受けた。素材でも、作りでも、音色でも、ストラディヴァリウスには全ての面でかなわないが、このバイオリンは世界にひとつしかない絶大な価値を秘めている。それは、ひとりの人の愛と命の値であって、これ以上価値のあるバイオリンは世にはない。
キリストの足跡シリーズも、主の十字架数日前のマタイ24-25章。主は自らの最期を前にして、私達の最期について語られた。私達もストラディヴァリウスならぬ名もない普通のバイオリンであったとしても、あなたを愛する神にとって、あなたには世界に一つしかない最高の価値がある。そして、私達には主に委ねられた働きがある。私にできる事、私がすべき事を最後の瞬間まで忠実に全うして、この御方の手の中で、この御方の傍でこの人生を閉じたい。人生は死で終わらないという天の調べを、沈み行くこの世界というタイタニックの甲板で最期まで奏で続けようではないか。