【横浜カルバリーチャペル】 天の窓
     
2018年4月22日

「 ソメイヨシノの命 」

先週、TVの情報番組で「ソメイヨシノ」について語らられていた内容に驚いた。日本全国にある桜の8割はソメイヨシノ(染井吉野)で、その数は数百万~1千万本と言われている。海外でも、1965年に日本政府が贈呈した3800本のソメイヨシノが咲くワシントンDC・ポトマック川岸などは余りに有名である。私が以前住んでいたカナダ・バンクーバーのスタンレーパークやクイーンエリザベスパークにも約4万本のソメイヨシノが咲き乱れ、長く日本に帰れなかったからか、海の向こうにある遠き故国を想っては、心乱れたりしたものである。

番組の何に驚いたかと言えば、日本中/世界中にそれほど多くのソメイヨシノがあっても、ソメイヨシノは1本しかないと言うのである。もともとソメイヨシノとは、江戸時代に2種の桜の交配によって生まれた新種であって、江戸にいながら奈良吉野の桜が見れるという事から当初「吉野桜」と呼ばれた。その特徴は、葉が出る前に大輪の淡いピンクの花が一斉に咲き揃う、非常に華やかで派手な桜である。それがなぜ1本しかないかと言えば、ソメイヨシノ同士での自然交配は不可能で、種子で増やす事はできないと言う。即ち、世界中に1千万本以上はあろうソメイヨシノは、全て接ぎ木によって増やされたものであり、実際に全く同じDNAを保有する事からソメイヨシノは世界に1本しかないと言われる。では、その命の始源となった1本はどこにあるのか?それはわからないそうである。ただ、東京小石川植物園入口に咲く1本の桜は、現在確認されている日本最古のソメイヨシノであって、樹齢140年~200年と言われ、江戸時代のソメイヨシノである事がわかっている。

今日の午後「召天者記念墓前礼拝/納骨式」が教会墓苑で行われる。墓苑周りの桜は既に散ってしまったが、たった1本のソメイヨシノの命が、今も世界中に生きて花を咲かせるように、私達の内に生きるこの命も、十字架という1本の木を通して接ぎ木されたイエス・キリストの命である。たとえ私達が心に罪を犯し、神と神の愛から離れたとしても、聖書は「もし、不信仰を続けないならば、接ぎ合わされるのです。神は、彼らを再び接ぎ木する事ができるのです」(ローマ11:23)と約束する。卒・入学式というこの季節に麗しく咲くソメイヨシノは、人生の「別れと出会い」を思わせてくれる木ではなかろうか。それは、愛する者とのこの世での別れと、新しい天での出会いと出発を、私達に教えているのであろうか。