【横浜カルバリーチャペル】 天の窓
 
2017年2月19日

「負ける建築・壁のない教会」

中央公論3月号の「わたしの仕事場」というコーナーに、「外と繋がった空間」という題で、東京オリンピック新国立競技場の設計をされた隈研吾氏の文章が載っている。隈研吾氏は横浜出身のデザイナーで、木材を多用した和のイメージを美しく織りなすデザインが特徴である。その代表作には「歌舞伎座」「根津美術館」「サントリー美術館」などがあるが、隅研吾氏の建築思想は「負ける建築」と言われる。それは建築物が自己主張する美しさではなく、周りの土地や環境が発する「声」を注意深く聴き、周りの環境に建物が上手に負ける(溶け込む)美しさを目指しているという。新国立競技場も「上から俯瞰(ふかん)した形にこだわらず、下から見上げた時『木でできている』と実感できる姿を目指しています」と言われた。

確かに、不採用となった元の新国立競技場は、自転車のヘルメットのような形の建造物で、それを上空から見下ろした姿が、今でも私達の脳裏に残っている。しかし、隈研吾氏のデザインの視点は、その逆で、下から私達が実際に見上げた時にどう見え感じるかを考えていたのである。確かに、完成すれば誰も空から眺める訳ではないのである。また、周りの自然・環境と一線を引いて分けるのではなく、建物の内側と外側が、互いに延長線上にあるかのように同化し一体化する自然な美しさを求められた。

これらの要素は、教会(堂ではない)建設にも大切な要素である。上から見下ろす教会ではなく、皆と共に下から神を見上げて聴く美しさのある教会。教会内と外、人と人との間に壁や仕切りを造って一線を引く教会ではなく、ここにある神の愛と聖さ、天の喜びと祝福という霊的な空気が、周りの世界・人々へと自然に流れ、隔たりなく拡張していく、そんな主の教会である。

先週、転入会式の祝福に駆け付けて下さった日本で最も大きな福音教会の長老様が、この礼拝堂に入った瞬間に聖霊様の臨在とあたたかな愛の空気を感じたと、何度も感動して話して下さった。先週のメッセージで「私はあなたの教会を建てる」でも「あなたは私の教会を建てる」でもなく、「私は私の教会を建てる!」と語られた主のお言葉を魂に、上に向かって、外に向かって祈ろうではないか!